トピック(維管束植物)

改訂第3版(2018)で明らかになったこと

今回の改訂で個々の種の生育状況に新しい情報を加え、評価の見直しを行った。ランクを変更した種は12種(例:コモロコシガヤ、シラスゲ、オサラン、コウトウヒスイランなど)、リストから外した種は1種(オオアオガネシダ)、新たに26種をリストに加えた(例:ミツバウコギ、ハマヤブガラシ、ホソバムラサキ、トックリスゲ、カギテンツキ、コカゲラン、ニオイラン、ツツザキヤツシロラン、ツボミヤツシロラン、フサシダなど)。和名や学名を変更した種は5種(例:トカラアジサイ、オキナワヒヨドリジョウゴ、トゲウミヒルモ、タイワンカンスゲなど)である。

前回の改訂の後、やんばる国立公園、慶良間諸島国立公園が新設され、西表石垣国立公園や沖縄海岸国定公園が拡充され、維管束植物の生育地の保全がある程度保証されることになったが、採集や小規模な開発により絶滅の可能性が高まった種も数多く確認された。増殖した野生化ヤギによる植生の破壊が生態系に深刻な影響を与えているものと危惧される尖閣諸島では、多数の種の絶滅が危惧されるが、1991年以降は上陸調査が行われておらず、現状を反映させることができなかった。

これまでの調査で全く発見されておらず、絶滅が危惧されていたヒメヨウラクヒバ、ホソバフジボグサ、コケセンボンギクなどが現地調査で再発見されたり、存在が不明だった西表島のソノハラトンボの自生が標本調査で確認されるなどの成果も得られた。今回の調査で実際に足を踏み入れることができなかった島嶼がまだ多く残っている。無人島や小島嶼を対象とした調査は、今後の課題である。新たにリストに追加された日本新記録種も多いことから、掲載種だけを対象とした調査でなく、基礎的な植物相全体を対象とした調査は今後も必要であると思われる。

横田昌嗣 (琉球大学理学部・教授)

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