1. 絶滅のおそれがある野生生物とは

絶滅のおそれがある野生生物とは

 [ヤンバルクイナ]

継続的な調査研究データを一定の判定基準で検討した結果、近い将来に絶滅するおそれがあると判断された野生生物を指します。野生生物の中には、すむ範囲がせまい、数がすくない、特殊な環境にすむ種がおり、これらの生物は環境の僅かな変化にも敏感に反応して、絶滅の危険性が高まりやすい傾向があります。現在、多く見られるような種でも、昔は今以上に多かったような場合は、減少率の観点から選定の対象となります。また、沖縄島の北部では比較的見られるものの、島の南部では絶滅が非常に危惧されるイボイモリのような種や、ミヤココキクガシラコウモリのように洞窟にすみ確認しづらい事から1970年代以降のいつの時期に絶滅したかが明らかでない種も含まれています。野生生物の変化は目に見えにくい状況で起きていることも多く、注意ぶかい観察を継続しながら考えていく必要があります。

沖縄県の自然環境のとくちょう

本県は、亜熱帯海洋性気候の温暖な気候であること、また160もの島々からなる島嶼県であることなど、国内の他の地域にはみられない自然環境の特長を有しています。こうした下地のうえで、多くの野生生物が島や地域、さまざまな自然環境ごとにすみわけながら生活しています。
また、山・川・海はそれぞれ密接につながっており、川と海を行き来する両側回遊性の生物が多いことも本県の特徴の一つとなっています。河川を通して運ばれた陸域の栄養分は、河口や干潟、沿岸域の自然環境の形成に必要なものであり、多様な生物からなる生態系をささえています。

沖縄県の絶滅のおそれのある野生動物

沖縄島北部に生息するヤンバルクイナやノグチゲラ、西表島に生息するイリオモテヤマネコのように、島や地域で独自に進化した固有種や固有亜種の多いことが、本県の動物にみられる特長の一つとなっています。また、生物多様性の豊かさは世界でも有数といわれています。

本県では、初版(1996)では484種の野生動物が絶滅のおそれがある種に選定されました。その後、第2版(2005)では837種、第3版(2017)では991種と増加傾向にあります。
このなかには新たに評価対象に加えた小分類群の種や学術学的進展や評価を可能とする新たな知見の集積により追加された種も含まれていますが、本県の野生動物の現状としては厳しい状況が継続しているものと考えられます。
分類群別には、貝類が最も多く4割を占め、次いで甲殻類、魚類、昆虫類の順で上位4分類群で8割を占めています。第3版では、哺乳類のミヤココキクガシラコウモリ、鳥類のダイトウノスリ、貝類のリュウキュウカワザンショウおよびキルンの計4種が新たに絶滅種に選定されたほか、絶滅の危険性が高い絶滅危惧Ⅰ類(ⅠA類とⅠB類を含む)や絶滅危惧Ⅱ類の上位カテゴリーの種が増加しています。
なお、初版で絶滅種と判定されたダイトウウグイスは奄美諸島や沖縄諸島で本亜種と考えられる現生個体群が確認され選定外(第3版)に、第2版で絶滅種とされた貝類のミヤコオカチグサは、わずかに現生個体群が確認されたことから、第3版では絶滅危惧Ⅰ類に変更されています。

分類群(動物) 初版(1996) 第2版(2005) 第3版(2017)
哺乳類 20 23 22
鳥類 72 76 90
爬虫類 27 34 37
両生類 8 10 10
魚類 38 56 124
甲殻類 58 76 137
昆虫類 216 160 111
クモ形類 5 6 33
多足類 20 34 8
貝類 20 362 419
合計種数 484 837 991

沖縄県の絶滅のおそれのある野生植物・菌類

沖縄島北部にのみ分布するオリヅルスミレやオキナワヤスデゴケ、西表島固有のハエヤドリトガリツブタケ、モノドラカンアオイ、魚釣島にのみ分布するセンカクオトギリのように、それぞれの島で進化した固有種(固有変種)や分布域の南限であるウバメガシ、また北限のヤエヤマシタン、地史的に興味深い分布を示すウラジロガシなど、きわめて多様な種が知られています。こうした特長を持つ本県の植物は、本来、生育範囲が小さい種や生育数が極めて少ない種も多く、開発や過度の採取により絶滅の危険性が高まっています。

本県では、初版(1996)では897種の野生植物・菌類が絶滅のおそれがある種に選定されました。改訂第2版(2006)では946種、第3版(2018)で1,023種と動物と同じく増加の傾向にあり、絶滅の危惧される種が少なくありません。

分類群(菌類・植物) 初版(1996) 第2版(2006) 第3版(2018)
菌類 125 100 85
維管束植物 691 685 716
蘚苔類 69 80 79
藻類 12 81 143
合計種数 897 946 1023

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