トピック(魚類)

宮古島のヨシノボリ類

沖縄県の川の中流から上流で普通に見られるハゼの仲間に、ヨシノボリ類(ヨシノボリ属)があります。沖縄県からは、ゴクラクハゼ、クロヨシノボリ、アヤヨシノボリ、シマヨシノボリ、ヒラヨシノボリ、キバラヨシノボリ、アオバラヨシノボリの7種が知られ、山が多く川も多い沖縄島、久米島、石垣島、西表島では多くの種が共存します。

宮古島は平坦な島です。地下水系が発達していますが、地表を流れる川は少なく、小規模です。ヨシノボリ類が住めそうな環境は少なく、現在その姿を見つけることはできません。しかし、過去には宮古島にもヨシノボリ類が生息していたようです。Okada and Ikeda(1939)は、1936年に宮古島白川で全長105.4 mmのゴクラクハゼ1個体が採集されたことを報告しています。ただし、ゴクラクハゼとしては大きすぎるため、これが本当にゴクラクハゼであったのか疑問は残ります。また、青柳(1948)は、ゴクラクハゼと「ヨシノボリ」が宮古島に分布すると書いています。この当時、ゴクラクハゼを除く日本産のヨシノボリ属は「ヨシノボリ」1種と考えられていたため、この「ヨシノボリ」がどの種だったのかは分かりません。いずれも詳細は不明で、本当にヨシノボリ類であったのか確認できていませんが、宮古島にヨシノボリ類が生息していた可能性はあると私は考えています。

現在の宮古島には、ゴクラクハゼもそれ以外のヨシノボリ類も生息しないため、それらは絶滅したのかもしれません。上記7種のヨシノボリ類のうち、生息地が限定されるアオバラヨシノボリ(絶滅危惧IA類)、キバラヨシノボリ(絶滅危惧IB類)、ヒラヨシノボリ(準絶滅危惧)を除く4種は、沖縄島などでは普通に見られるため、レッドデータおきなわには掲載されていません。しかし、特に小規模な島には人知れず絶滅の危機に瀕している個体群もあるでしょう。詳細な調査と生息状況の評価が望まれます。

前田 健 (沖縄科学技術大学院大学)

  • 宮古島白川の河口部

    かつてゴクラクハゼが報告された宮古島白川の河口部(2010年4月、花原望撮影)。流れは乏しく、河口閉塞している。

  • 沖縄島のゴクラクハゼ

    沖縄島のゴクラクハゼ

Okada, Y. and H. Ikeda, 1939. The freshwater fishes of Miyako-zima and adjacent islands. Biogeographica, 3: 210–219.
青柳兵司, 1948. 琉球列島産淡水魚類総説. 動物学雑誌58: 13–14.

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