カミキリムシを知っているかな?長い触角がかっこいい、手のひらに乗るくらいの虫だよ。日本には約800種類、亜種を入れると900種類以上いるといわれている。多くのカミキリムシは、倒れた木や枯れ木などに卵を産み付けて、幼虫は木の中を食べて大きくなる。つまり、森の中で枯れ木を分解する役割を持つ虫なんだ。でも、中には生きている木の幹に卵を産みつける種類もある。そうすると、幼虫に食べられた木は弱ってしまう。
ゴマダラカミキリは、生きている木に卵を産むカミキリムシだ。日本中に住んでいて、3cm前後で、黒い体に白い点々もようがある。いろいろな木にいるけれど、ミカンの木が好きなので、ミカン農家からは害虫として嫌われているんだ。
このゴマダラカミキリには亜種がいくつかあって、オオシマゴマダラカミキリ、タイワンゴマダラカミキリなどがいると言われている。ただ、どれも見た目が似ているので、見分けはむずかしい。
ゴマダラカミキリ類と似ているのは、点々もようが黄色いキボシカミキリだ。でも、これには頭に黄色いたてすじがあるのが特徴だよ。ゴマダラカミキリ類の頭にはたてすじがないので、ここで見分けることができるよ。
カミキリムシの仲間をつかまえると、キィキィと音を出すことがある。体の節をこすり合わせているんだ。おもしろいけれど、大型のカミキリムシはあごの力が強いので、かまれないように気をつけてね!
全身真っ黒な鳥、カラス。本土では、街中でたくさん見られる鳥として、また、外に出されたごみをあさる鳥として、ちょっと嫌われもの。では、沖縄にはどんなカラスがいるのかな?
実はカラスにも、いくつかの種類があるんだ。まず、くちばしが太く、頭が角ばって見えるのが、ハシブトガラスの仲間。本来は森林性で、山に住んでいる。沖縄にいるのは、このハシブトガラスの仲間だよ。沖縄島から宮古諸島のリュウキュウハシブトガラスと、与那国島以外の八重山諸島にいて、少し小ぶりのオサハシブトガラスだ。
本土では、ハシボソガラスも多い。ハシブトガラスよりも、くちばしが細く頭が角ばっていなくてスマートな感じ。畑などのある開けた場所に住んでいる。沖縄には普段はいないけれど、冬にごくまれに渡ってくることがある。こうした鳥を「迷鳥」と言うんだ。コクマルガラスという、やや小さいカラスの仲間も迷鳥として記録されている。また、同じく小ぶりのミヤマガラスが、冬鳥として九州から沖縄島の北部にやってくることがある。
ハシブトガラス以外のカラスは、沖縄ではとても珍しいよ。でも、パッと見たら、みんな黒い鳥なので、見分けにくいかもしれないね。その時は、鳴き声に注意してみよう。
ハシブトガラスは、住む場所を山から街の中にどんどん広げてきた。今では、本土の都市部で急激に数を増やしているんだ。高いビルが立ちならぶ街が、森の木々と同じ感じなのかもしれないね。人の出すごみも、雑食のハシブトガラスにとっては豊かな食べ物になっている。
沖縄島では、ハシブトガラスは森が広がる北部に多い鳥だった。けれども、この数年で、どんどん南に分布を広げてきた。そして今では、中部でも南部でも、このカラスを普通に見かけるようになったんだ。そのうち、沖縄でもカラスのごみあさりが問題になるかもしれないよ。みんなのお家の近くにカラスがいるか、ぜひ探してみてね。
みんな、ムーチーを食べるのは好きかな?あのお餅を包み、独特のいい香りをつけてくれる葉が、「月桃」と書いてゲットウと読む、この植物だ。沖縄の言葉では、サンニンとかムーチーガサと呼ばれているね。
ゲットウは、庭や公園、畑のはしっこなどにもよく植えられているけれど、自然の野山には、実はこれと似た植物が他にもある。それが、クマタケランの仲間だ。
クマタケランの仲間は沖縄に3種類ある。ゲットウとの大きな違いは、ゲットウの花が下向きにたれ下がるのに対して、クマタケランの仲間は花が上向きに咲くことだ。野外で生きものさがしをしながら、ついでにこうした植物を見つけるかもしれないので、見分け方を紹介しよう。
この違いをよく見比べると、ゲットウ → クマタケラン → アオノクマタケランの順番に、葉っぱの香りと葉のふちの毛がなくなっていくことがわかるね。
葉も花も、クマタケランは、ゲットウとアオノクマタケランの中間的な特徴がある。実は、クマタケランは、ゲットウとアオノクマタケランの雑種ではないかと考えられているんだ。クマタケランやアオノクマタケランも、ムーチーを包む葉っぱに使えるけれど、ゲットウよりも香りが弱まっていく。やっぱり、ムーチーにはゲットウがいいかな?香りが苦手な人には、クマタケランもいいかもしれないね。
こうした雑種がいつごろ生まれたのかはよくわからないけれど、こんなふうに種類が混ざり合って、植物の進化が少しずつ進んでいくのかなと思うと、植物の観察もおもしろくなってくるよ!
沖縄の島々にはそれぞれの歴史があって、島ごとに生き物の種類が違ったり、その島だけに住む「固有種」と呼ばれるような生き物がいたりする。だけど、飛行機や船の行き来が増えると、生きものが島に運ばれる機会も増えてしまった。また、何かの目的で持ち込まれる動植物もある。それらが野外に放たれてしまうと、元々の島の自然のしくみを変えてしまうことがある。(→外来種のはなし)
ギンネムという植物は南アメリカ原産で、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも指定されている。世界中に広がっている外来種だ。沖縄には生えていなかったのだけれど、緑肥用などの目的で1910年に八重山諸島に持ちこまれた。沖縄島では、1945年に終わった戦争で荒れ果てた島の土壌の流出を防ごうと、戦後、米軍によってギンネムのタネがまかれた。ギンネムは、ミモシンという毒成分をもち、多くの昆虫や動物はギンネムを食べることができない。さらに、他の植物もギンネムと一緒には育ちにくくなる。その結果、島中の空き地でこの植物が生い茂るようになった。
やがて、ギンネムを食べる外来種が沖縄にやってきた。それがギンネムキジラミだ。中央アメリカ原産のこの小さな黄色い虫は、ミモシンの毒を分解することができる。そしてギンネムの汁を吸い、若い葉っぱや茎に卵を産む。沖縄では1985〜86年に広がった。餌のギンネムがたくさん生えた、天敵のいない島で、ギンネムキジラミは急激に数を増やしたんだ。その結果、時々ギンネムが枯れる様子が見られるようになった。
しかし、ギンネムはたくさんのタネを落とすので、なかなか全滅しない。そして今度は、ギンネムキジラミを追いかけるように、もう一つの外来種が沖縄にやってきた。北アメリカ原産のハイイロテントウだ。1987年に恩納村で初めて見つかり、今では県内の全域で見られる。ほぼギンネムキジラミだけを食べるので、今の所、他のテントウムシとはうまく共存できているらしい。
外来種どうしの3段階の食物連鎖が、本来の生息場所から遠く離れた沖縄の島々で成り立ってしまったんだよ。このあと、これらがどういうふうに数を増やしたり減らしたりしていくのか、本当に在来の動植物に影響しないのかどうか、みんなで注意深く見守っていきたいね。
生きものの名前って、いろいろあるよね。沖縄でジューミーと呼ばれているのが、図鑑にはアオカナヘビと書いてある。さらに、Takydromus smaragdinus なんて、アルファベットで書かれたむずかしい名前ものっていたりする。これを整理すると、
学名は難しいけれど、これがわかると世界中の論文や情報を調べることができる。研究するときに、なくてはならない名前なんだ。ラテン語は、英語やフランス語などヨーロッパの多くの言語の元になった言葉で、生きものの特徴を現す単語や、生きものが発見された場所や、見つけた人の名前が学名に使われることもある。その意味を調べるのもおもしろいよ。ちなみに、カナヘビ属を意味する Takydromus は「すばやい走り」、smaragdinus は「エメラルドグリーンの」という意味なんだって!
絶滅危惧種って、数が少ない貴重な生き物のことだっていうのは分かるかな?これには、実はいろいろな段階があるんだ。
研究者は、生きものの数が少なくなってきたことに気づくと、その生き物が見つかる範囲の広さや、住んでいる環境の様子、数の減り方の速さなど、いろいろな調査をする。そして、数が減っていることをみんなに知らせて守った方が良いと思ったら、絶滅危惧の危険性がどの程度かを総合的に考えて、段階が決められる。これは定期的に見直されて、生きものの数が増えたり減ったりすれば、そのたびに段階が見直されるんだ。
また、絶滅危惧種を集めたリストを「レッドリスト(RL)」や「レッドデータブック(RDB)」と呼ぶ。世界では、国際自然保護連合(IUCN)が作るレッドリストがある。また日本では、環境省が作るレッドリストや、都道府県がそれぞれに作るレッドデータブックがある。沖縄県でも、いろいろな動物・植物についての「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)」が発表されているよ。
大昔、沖縄の島々は、大陸とつながったり離れたりを何度かくりかえしてきたと考えられている。しかも、つながっていた時代や期間が、島によって違う。つながっているときは、大陸からいろいろな動植物が渡って来るけれど、切り離された島にはやって来ない。切り離された島では、陸上の動植物が独自に進化をして、少しずつ違う種類になっていく。沖縄の島々で、例えば沖縄島にはアオカナヘビ、宮古島にはミヤコカナヘビ、石垣島にはサキシマカナヘビというように、とてもよく似ているけれどちょっとだけ違う、という種類が見られるのは、こうした島の歴史を示しているんだ。
さて、生きものが自分で移動して住む場所が変わったり、たねが運ばれたりして、新しい土地で暮らすようになることがある。そうした生きものの広がりは、自然なことだね。でも、特にこの100年くらいの間、人間が作った車や船や飛行機が世界中を動き回るようになった。そうすると、自然に生きものが広がるのとは比べ物にならないくらいの速さで、違う地域の生きものが様々な土地に運ばれるようになったんだ。こうした人間の活動のせいで、今までいなかった土地に新しく入り込んだ生きものを外来種と呼んでいる。
外来種は、本当はその土地にいないはずの「不自然な生きもの」だよ。よその生きものが、何かの目的でわざと持ち込まれり、車や船などにまぎれて運ばれたとしよう。新しい場所で、住みかやエサが見つからなかったり天敵がいたりして、生きていけないときは、その生きものはやがて消えていく。でも、そこで生き残って子孫を増やすことができたとき、私たちは初めて「あ、外来種が増えてきた!」と気がつくんだ。だから、外来種そのものは別に悪者ではないよ。でも、沖縄のような周りを海で囲まれた島々では、島ごとにいろいろな生きものの歴史がある。もともと島に住んでいた生きもの(在来種)や、世界でその島でしか見られない生きもの(固有種)がたくさん生きている。そこに外来種がやってくると、在来種や固有種の住みかやエサが奪われて、島の生態系が崩れてしまうんだ。そして固有種が、やがて絶滅危惧種になってしまうこともある。
国際自然保護連合(IUCN)が「世界の侵略的外来種ワースト100」、日本生態学会が「日本の侵略的外来種ワースト100」というリストを作っている。これは、外来種の中でも、特に元々の自然や人の暮らしに大きな影響を与える外来種を選んで、注意を呼びかけているものだ。また、環境省が定めた「特定外来生物」については、国内での飼育や栽培、移動などが禁止されている。例えばグリーンアノールは、「日本の侵略的外来種ワースト100」で、しかも「特定外来生物」にも指定されている。
沖縄島のやんばるでは、固有種のヤンバルクイナを守るために、外来種のフイリマングースの駆除が行なわれているね。外来種の命が、固有種の命よりも軽いわけではないよ。でも、駆除をして外来種の数を減らすことは、世界でここだけにしかない元々の島の自然と生きものを守り続けていくために、必要なことなんだ。今、やんばるでは人が捨てたペットの猫や犬も増えてしまって、問題になっている。猫や犬は、人と一緒に暮らすように育てられた生きものだから、急に山の中に放り出されたら困る。やんばるの固有種たちも新しい天敵が増えて困る。私たちも猫や犬を駆除しなければならなくなる。こんなふうに、生きものの命をお互いにうばわないですむように、島によその生きものを持ち込まないこと!飼っているペットを絶対に放したり捨てたりしないこと!が大切なんだよ。