沖縄の道端で、こげ茶色の「ひっつき虫」のたねをつくる白い花は、きっと見たことがあるよね。これがコセンダングサの仲間だ。でも、この花の名前は、実はとってもむずかしい! なぜかというと、似た種類がいくつもあって、研究者の間でも分類や名前が混乱しているんだ。コセンダングサの仲間には、まず大きく2つのグループがある。
1は和名がコセンダングサで、この仲間の基本の名前になっている。学名を Bidens pilosa var. pilosa という。「var.」は変種という意味で、この仲間には、よく似た変種がたくさんある。それが2のタイプだ。2には、次の変種があるといわれている。
上から順番に B. pilosa var. minor、B. pilosa var. bisetosa、B. pilosa var. radiata という学名がついている。そして、色々な図鑑でこれらの変種につけられた和名が、
さらに、最後の B. pilosa var. radiata には、茎が横に這う(はう)形になる品種(form.)がある。
学名に対する和名が1つに決まっていなくて、どの名前を使ったら良いのかわからないね!沖縄では、大きな花を付けるタイプがよく見られ、タチアワユキセンダングサと呼ばれることが多い。しかし、シロノセンダングサだという人もいれば、いや実はハイアワユキセンダングサだという人もいる。調べれば、もっと種類が見つかってくるかもしれない。
コセンダングサ類は北アメリカ原産で、日本には明治時代に入ってきたらしい。わりと歴史の古い外来種なので、日本の環境になじんでしまって帰化植物と言われることもある。海外の分類では、あまり細かく学名を分けずに、花びらがあってもなくても Bidens pilosa で済ませているようだ。この植物は食べることができる。若い葉はてんぷらにすると美味しいし、宮古島ではハーブの一種として栽培されている。
花びらやたね、葉っぱの形や大きさ、茎の伸び方をていねいに見比べて、分類や名前を整理していくのも、地味だけれど大切な研究者の仕事なんだ。そして最近では、見た目の特徴だけでなく、遺伝子を調べることで分類の研究が行なわれている。ぜひこれからも研究を進めて、これらの名前にスッキリ整理をつけてほしいね!
シロガシラは、頭のてっぺんが白くて、特徴的な大きな声で鳴くので、近くにいると見つけやすい鳥だよ。八重山諸島には昔からシロガシラが住んでいる。これは在来種だ。ところが最近、沖縄島とその周辺の離島でも、シロガシラの仲間を見かけるようになったんだ。これは、自然に分布が広がった可能性もあるけれど、人が飼う目的で持ち込んで、それが野外に逃げて野生化してしまったのではないかとも考えられている。もし人が持ち込んだのなら、沖縄島にいるシロガシラは外来種ということになる。
シロガシラの仲間は中国南部や台湾などに住んでいる。台湾から近い八重山諸島にシロガシラがいるということも、琉球列島の島の歴史の一つだよ。この八重山諸島のシロガシラは、沖縄県では準絶滅危惧種に指定されている。一方、最近まで沖縄島にシロガシラはいなかった。もし、「かわいい」とか「飼いたい」というだけで、他の地域のシロガシラを持ち込んだとしたら、生きものの歴史が混乱してしまうよね。
ちなみにシロガシラの仲間は、木の実や果実のほか、実りの少ない冬の間は畑の野菜も食べる。キャベツやレタスに穴を開けてしまうんだ。だから農家には嫌われて、害鳥となっているんだね。生きものも人も困らないように、勝手によその生きものを持ち込まないようにしようね!
生きものの名前って、いろいろあるよね。沖縄でジューミーと呼ばれているのが、図鑑にはアオカナヘビと書いてある。さらに、Takydromus smaragdinus なんて、アルファベットで書かれたむずかしい名前ものっていたりする。これを整理すると、
学名は難しいけれど、これがわかると世界中の論文や情報を調べることができる。研究するときに、なくてはならない名前なんだ。ラテン語は、英語やフランス語などヨーロッパの多くの言語の元になった言葉で、生きものの特徴を現す単語や、生きものが発見された場所や、見つけた人の名前が学名に使われることもある。その意味を調べるのもおもしろいよ。ちなみに、カナヘビ属を意味する Takydromus は「すばやい走り」、smaragdinus は「エメラルドグリーンの」という意味なんだって!
絶滅危惧種って、数が少ない貴重な生き物のことだっていうのは分かるかな?これには、実はいろいろな段階があるんだ。
研究者は、生きものの数が少なくなってきたことに気づくと、その生き物が見つかる範囲の広さや、住んでいる環境の様子、数の減り方の速さなど、いろいろな調査をする。そして、数が減っていることをみんなに知らせて守った方が良いと思ったら、絶滅危惧の危険性がどの程度かを総合的に考えて、段階が決められる。これは定期的に見直されて、生きものの数が増えたり減ったりすれば、そのたびに段階が見直されるんだ。
また、絶滅危惧種を集めたリストを「レッドリスト(RL)」や「レッドデータブック(RDB)」と呼ぶ。世界では、国際自然保護連合(IUCN)が作るレッドリストがある。また日本では、環境省が作るレッドリストや、都道府県がそれぞれに作るレッドデータブックがある。沖縄県でも、いろいろな動物・植物についての「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)」が発表されているよ。
大昔、沖縄の島々は、大陸とつながったり離れたりを何度かくりかえしてきたと考えられている。しかも、つながっていた時代や期間が、島によって違う。つながっているときは、大陸からいろいろな動植物が渡って来るけれど、切り離された島にはやって来ない。切り離された島では、陸上の動植物が独自に進化をして、少しずつ違う種類になっていく。沖縄の島々で、例えば沖縄島にはアオカナヘビ、宮古島にはミヤコカナヘビ、石垣島にはサキシマカナヘビというように、とてもよく似ているけれどちょっとだけ違う、という種類が見られるのは、こうした島の歴史を示しているんだ。
さて、生きものが自分で移動して住む場所が変わったり、たねが運ばれたりして、新しい土地で暮らすようになることがある。そうした生きものの広がりは、自然なことだね。でも、特にこの100年くらいの間、人間が作った車や船や飛行機が世界中を動き回るようになった。そうすると、自然に生きものが広がるのとは比べ物にならないくらいの速さで、違う地域の生きものが様々な土地に運ばれるようになったんだ。こうした人間の活動のせいで、今までいなかった土地に新しく入り込んだ生きものを外来種と呼んでいる。
外来種は、本当はその土地にいないはずの「不自然な生きもの」だよ。よその生きものが、何かの目的でわざと持ち込まれり、車や船などにまぎれて運ばれたとしよう。新しい場所で、住みかやエサが見つからなかったり天敵がいたりして、生きていけないときは、その生きものはやがて消えていく。でも、そこで生き残って子孫を増やすことができたとき、私たちは初めて「あ、外来種が増えてきた!」と気がつくんだ。だから、外来種そのものは別に悪者ではないよ。でも、沖縄のような周りを海で囲まれた島々では、島ごとにいろいろな生きものの歴史がある。もともと島に住んでいた生きもの(在来種)や、世界でその島でしか見られない生きもの(固有種)がたくさん生きている。そこに外来種がやってくると、在来種や固有種の住みかやエサが奪われて、島の生態系が崩れてしまうんだ。そして固有種が、やがて絶滅危惧種になってしまうこともある。
国際自然保護連合(IUCN)が「世界の侵略的外来種ワースト100」、日本生態学会が「日本の侵略的外来種ワースト100」というリストを作っている。これは、外来種の中でも、特に元々の自然や人の暮らしに大きな影響を与える外来種を選んで、注意を呼びかけているものだ。また、環境省が定めた「特定外来生物」については、国内での飼育や栽培、移動などが禁止されている。例えばグリーンアノールは、「日本の侵略的外来種ワースト100」で、しかも「特定外来生物」にも指定されている。
沖縄島のやんばるでは、固有種のヤンバルクイナを守るために、外来種のフイリマングースの駆除が行なわれているね。外来種の命が、固有種の命よりも軽いわけではないよ。でも、駆除をして外来種の数を減らすことは、世界でここだけにしかない元々の島の自然と生きものを守り続けていくために、必要なことなんだ。今、やんばるでは人が捨てたペットの猫や犬も増えてしまって、問題になっている。猫や犬は、人と一緒に暮らすように育てられた生きものだから、急に山の中に放り出されたら困る。やんばるの固有種たちも新しい天敵が増えて困る。私たちも猫や犬を駆除しなければならなくなる。こんなふうに、生きものの命をお互いにうばわないですむように、島によその生きものを持ち込まないこと!飼っているペットを絶対に放したり捨てたりしないこと!が大切なんだよ。